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2017-08-12

娘のコルドベス

 10年前、離婚した時にフラメンコを辞めました。一人で娘を育てて行く為にまず削ったものが、唯一の趣味であるフラメンコだったのです。正直戻りたいと思ったことはありませんでした。この10年で常に私の頭を占めていた思いは、 娘に対する申し訳なさだけ。片親になってしまったこと、金銭面で苦労をかけてしまうこと、流行りの服やゲームを買ってあげられないことに比べたら、フラメンコなんてどうでもいいことでした。
ある日娘が、昔の写真を見つけて持ってきました。フルメイクをしてスポットライトを浴びた発表会の写真です。「昔こんなことしてたの?」「そうよ。この衣装まだあるわよ」。そこで始まる二人きりのファッションショー。当時3歳だった娘は、いつのまにか私の衣装を着られるようになっていました。フリルたっぷりの衣装を着て火がついた娘は、フラメンコを習いたいと言い出しました。古い靴と練習用ファルダ、レオタード一式をあげると、どれもくたびれて色褪せたものなのに「ありがとう」と言ってくれました。タンギージョを習い始めた娘に、私はコルドベスだけ新しいものをプレゼントしました。
「帽子買ってくれてありがとね。大変なのに月謝も出してくれてありがと。あ、それからさ。今までずっとありがとね」。娘がレッスンへ出かける直前に照れくさそうに言ってくれた言葉。返事を返そうと思った時には、玄関は閉まっていました。私はその場で泣き崩れました。

(神奈川県・まみ/42歳)

<パセオフラメンコ2009年12月号 掲載>

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