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2017-08-13

私だけじゃなかったの?

レッスンで鏡を見るのが嫌いだった。腕は短い、ウエストも細くない、マノが美しくない、体の動きがぎこちない。自分以外は皆上手に見えた。私だけがいつまでも上達しない。いつしか私には、人に隠れてレッスンを受ける癖がついていた。発表会には一度も出ることなく、裏方を手伝った。その方が私に合っていた。
そんな私が先日、10年目にして初めて舞台に立った。仲良くなった友人が強く勧めてくれたから。舞台では恥ずかしいという思いだけが頭を占めていて、それ以外の感想はなかったけれど、踊り終わると、皆が次々に綺麗だったと褒めてくれた。親も喜んでくれた。こんなに褒められるなんて思ってもみなかったから、びっくりするほど嬉しくて気持ちよかった。
友人と二人で打ち上げへ行くと、そこで彼女がこぼした言葉に驚いた。「いつも自分だけが下手なような気がして落ち込む」と言ったから。覚えも早くスタイルも良い、私の憧れるその彼女が、私と同じことを思っていたのだ。さらに彼女は、私の長所を教えてくれた。セクシーなアイレはないけれど(笑)、元気でコケティッシュな踊りが似合うと。
嫌だった舞台に立ったことで、人生が変わった。コンプレックスを持っていたのは自分だけではなかった。長所は伸ばして、短所は努力でカバーする。美しくなかったのは容姿ではなく、努力の足りない生き方だった。そんなシンプルな事実を知った。新しいクラスで私は、コケティッシュなガロティンと、アイレたっぷりなソレアを選んだ。

(神奈川県・杏奈/34歳)

<パセオフラメンコ2010年1月号 掲載>

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