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2017-08-17

母の靴音

 私は小さい頃、ハイヒールのコツコツという音が大好きで、そういう音がする母の靴を狙っていました。幼い私は、母に聞きました。「この靴、大きくなったらあきにくれる?」「いいわよ~」母の快い返事を受けた私は、すぐさま全てのハイヒールに「自分の」という意味で「あきの」とボールペンで書いてしまいました。 一番目立つ甲の部分にデカデカと。何足もの靴を台無しにされ、母のがっかりした顔を今も覚えています。大人になった私は偶然フラメンコに出会いました。幼い頃の事件など忘れていましたが、なぜかサパテアードの音は好きでした。練習は好きだとは言えません。2連も3連も追いつかず、いい音も出せません。でも時々出せるゴルペの響き渡る音、タコンやプンタの繊細な音はどれも心を躍らせ ます。幼い頃の罪を思い出した私は、フラメンコに惹かれたのは、幼い頃の靴音フェチが影響しているからかもしれないと思いました。あの頃憧れた踵の高い靴を履いているのだと思ったら、少し足打ちが楽しく思えてきた。……ような気もします。苦手なのは足打ちだけではありません。カスタネットもブエルタも苦手。課題はいっぱいあります。でも大好きなフラメンコ。難しいから面白いフラメンコ。少しずつあの大好きな「音」に近づけるように、これからも大好きな仲間と一緒に練習していきたい。綺麗な音が耳に響くと、いつも母の温かさを思い出します。これからは私が恩返ししなくてはと思います。

(神奈川県・あき/36歳)

パセオフラメンコ20105月号 掲載

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