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2017-08-18

裸足でフラメンコ

母子家庭。いまの時代珍しくもないこの響きが私には重いものでした。誰もがフラメンコを止めるよう言ってきたからです。昼も夜も働かなければいけない生活の中で、なぜ踊り続けるのか何度も責められました。正直、自分でも止めるべきなんじゃないかと心のどこかでは思っていました。でも止められませんでした。唯一の心の支えだったから。家計を切り詰め、発表会などお金のかかることには参加しないで、ただレッスンにだけ通いました。華やかな衣装を着ることはなくても「実写版ヒターナなのよ」と笑っていられました。しかし結婚している頃に買ったフラメンコシューズをはきつぶした時だけはそうもいきませんでした。新しい靴を買えない私は裸足でレッスンを受けたのです。あれはさすがに惨めでした。ヒターナのギャグも出ませんでした。
でもあのとき感じた卑屈さも、今ではいい思い出です。裸足でも何でも踊れれば幸せだったと思えます。他の誰でもない娘が応援してくれたから。いつも娘に対する申し訳なさが心の片隅にあった私に、逆に娘はいつも応援の言葉をくれました。「一週間の中でこの時間だけがイキイキしている」と言って週一度はひとりで夕飯を食べていてくれました。「今習っているソレアは苦労して泣いてきた人にしか踊れない踊りなの。だから私はラッキーなの」そんなことを胸張って自慢する私を、娘も友人も呆れた顔で見ます。ソレアを踊る今では、流した涙にさえ感謝したいと思うのです。
(神奈川県・Merienda/42歳)

<パセオフラメンコ2010年6月号 掲載>

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