toggle
2017-08-20

かわいいソレア

私は姉妹でフラメンコを習っている。上級クラスの私と、万年初心者の妹。出来の悪い妹には昔から何かと手を焼かされた。初めての舞台ではブラウスを持ってくるのを忘れ、マントンを身体に巻いてセビジャーナスを踊った。タンギージョの舞台の時は手ぶらで楽屋を出る妹を帽子を持って追いかけた。そして先日の発表会。私はいつもに増してピリピリしていた。5人以上でしか踊ったことがない私が初のパレハ。曲は難しいソレア。それでもやはり当日は妹の世話に追われた。「花を付け忘れてるよ」「次の曲の靴は白だよ」「もう出番が近いよ」。妹を送り出したあとの自分の出番。アイレたっぷりに頭上でマノを巻いたその手首へ視線をはせた瞬間、思わず「うげっ」と声が出た。腕時計をつけたまま踊っていたのだ。妹のタイムキーパーを務めていた私は、最後に舞台袖で時計を外すのを忘れた。ピンクの腕時計は重いソレアの空気にはそぐわな過ぎだった。踊り終えて楽屋でうなだれる私に妹が言った。「大丈夫。私なんてスパッツはいてたから」。ファルダを持ち上げると確かにスパッツが現れた。しかもそのスパッツには水玉模様が入っている。おいおい、そんな笑ってる場合かよ。でも思えばこの天然に昔から救われてきたんだったっけ。「かわいいソレアだったよ」。かわいいソレアって褒めてないんですけど……。でもなぜかその言葉で楽になった。面と向かっては言えそうにないけど、手の焼ける私の妹へ。いつもありがとう。

(神奈川県・エスペランサ/28歳)

パセオフラメンコ20108月号 掲載

コメント欄に感想などいただけると激しく喜びます🙂

  • 果報は寝て待て 2018年8月3日
    果報は寝て待て 「良いことは自然にやってくるものなので、静かに待っているのがいい」 決して「 寝てるだけでも起 […]
    yolanda
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。