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2017-09-10

月に映える白い花

 もう一昨年の冬のお話です。今思えば、軽い鬱だったのかもしれません。かろうじて仕事には行っていましたが、毎日続く頭痛と倦怠感で家事は一切できず、仕事以外は荒れた部屋で眠るだけの日々が続いていました。大好きだったフラメンコもお休みしました。
寒い冬が過ぎ、春も終わりに近づいた頃、私はひとり夜桜を見にでかけました。もうほとんどの花は散り、葉桜模様でしたが、月の明るい晩だったので、夜空に映える緑の葉と、少しの白い花がとても美しかったのを今も鮮明に覚えています。その日に何があったわけでもありません。なぜその日に、全ての苦しみから抜け出せたのかもわかりません。その美しい景色をひとりしばらく見ていただけでしたが、なぜか悩んでいたことがとつぜんくだらないことに思えてきたのです。そしてスッキリした私の頭に浮かんだのは、やはり「フラメンコを踊りたいな」だったのでした。フラメンコが私の中にあったことに感謝しました。仲間たちは何も聞かずにガリガリに痩せた私の復帰を喜んでくれました。半年以上のブランクですすんでしまった振り付けを時間外にスタジオをとって教えてくれました。
あれから桜が2度咲きましたが、夜空に映える葉桜を見ると、今も懐かしいような苦しいような感覚に陥ります。あのとき、仲間たちが教えてくれたカラコレスはすっかり忘れてしまって踊れませんが、皆の優しさと温かさは、あの日の美しい桜と共に今も私の心の中にずっと咲き続けています。

(神奈川県・あずき/44歳)

パセオフラメンコ20125月号 掲載

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